特設サイト第77回 漢方処方解説(38)桃核承気湯

今回、ご紹介する漢方処方は、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)です。
主に、月経不順や月経困難症、月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)、更年期障害などの婦人科疾患に用いる処方とされています。婦人科疾患に応用される漢方処方は数多くありますが、「気の巡り」を改善する加味逍遙散、「水の巡り」を改善して「冷え」をとる当帰芍薬散などとは違い、「血流の滞り(血:おけつ)」を改善する「駆血薬(くおけつやく)」として働く処方として知られています。

血」は、漢方医学において、病気の原因となる産物だと言われており、現代医学的にはうっ血や微小管循環障害などと推定されますが、その本態についての科学的な証明はできてはいません。漢方では、ぶつけた覚えがないのに痣ができることがあり、その痣を「血斑」と呼び、血の巡りが滞った状態のサインの一つとします。ご婦人では、よくあることかと思うのですが、いかがでしょうか。駆血剤にもいろいろとありますが、本処方は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)などとグループをなすものです。

桃核承気湯の構成生薬
桃核承気湯の構成生薬

構成生薬は、桃仁(とうにん)、桂皮(けいひ)、大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)、芒硝(ぼうしょう)の5つです。処方構成をみますと、大黄、甘草、芒硝からなる「調胃承気湯(ちょういじょうきとう)」に桂皮と桃仁を加えたものであると言えます。この調胃承気湯もまた、大黄と甘草からなる「大黄甘草湯」に芒硝を加えたものと言え、そう考えますと、常習性便秘に応用される大黄甘草湯が基本にあり、さらに下剤としての作用をもつ芒硝が加わった調胃承気湯は一種の下剤であり、桃核承気湯もまた緩下作用をもち、胃腸機能を整える処方であると言えます。また、漢方では「気」が頭の方に登っていくことを「気の上衝(じょうしょう)」といいますが、桂皮と甘草の組み合わせは「上衝する気」を引き下げる作用をもち、のぼせや頭痛、動悸といった症状を鎮めます。

このように、それぞれの構成生薬が協働して、月経痛や月経不順、月経前の焦燥感や精神不穏、のぼせ、足冷え、頭痛、肩こり、動悸、めまいなどを改善するとされます。コロナ禍により、これまでとは違う生活を強いられることによる有形無形のストレスのせいか、女性特有の不快な症状がこれまでよりも30%程度増加したという報道があります。それぞれの症状や証に合わせて、これら漢方エキス製剤を活用していただけたらと思います。是非、薬局やドラッグストアで薬剤師に相談してみてください。

(2021年3月3日)

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