特設サイト第76回 漢方処方解説(37)防己黄耆湯
今回、ご紹介する漢方処方は、防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)です。
本処方のエキス製剤の添付文書に記載されている効能・効果としては、「色白で、筋肉軟らかく、水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛のあるもの」の諸症として、「腎炎やネフローゼ、妊娠腎、陰嚢胞水腫、肥満症、関節炎、廱(よう)、癤(せつ)、筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順など」が挙げられていますが、変形性膝関節症の第一選択となる漢方処方として知られています。とくに、膝関節の腫れや疼痛、関節に水が溜まるといった症状を目標としますが、効果を認めるまでには時間がかかるとも言われます。
構成生薬は、黄耆(おうぎ)、防已(ぼうい)、蒼朮(そうじゅつ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)の6種類です。中心となる「防已(ぼうい)」は、ツヅラフジ科のオオツヅラフジのつる性の茎および根茎を用いる生薬で、鎮痛、抗炎症、抗アレルギー作用などが確認されており、臨床的には消炎、利水、鎮痛剤として水腫、神経痛、関節炎、リウマチに用いるとされます。処方名にもある、もう一つの生薬である「黄耆(おうぎ)」はマメ科キバナオウギの根茎を用いる生薬で、臨床的には止汗、利尿、強壮作用があるとされています。他に、蒼朮も利水剤の一つでありますし、構成生薬からも漢方医学において「体表面の水毒」とよぶ水分代謝異常に用いる処方であることがわかります。
いろいろな漢方薬に関する書籍においても、肥満への効果は乏しいことが記されておりますし、ダイエット目的に用いるものではありません。
本処方もエキス製剤として、ドラッグストアの店頭に並んでいます。
正しく漢方薬を使うよう、お願いいたします。
(2021年1月15日)