特設サイト第55回 漢方処方解説(22)大黄甘草湯

今回取り上げる漢方処方は、大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)です。この処方は、大黄(だいおう)と甘草(かんぞう)の二味からなるものです。

主薬である大黄は、タデ科のダイオウという植物の根茎を用いる生薬で、お菓子の材料として知られる野菜のルバーブもその仲間です。大黄には、センノシド類と呼ばれる成分が入っており、これが私たちの腸の中に共棲している腸内細菌によって代謝され、レイン-アントロンと呼ばれる化合物になり、瀉下(しゃげ)活性、つまりお通じをよくする作用を示します。
原典である「金匱要略(きんきようりゃく)」という漢の時代の処方集には、「食し終われば即ち吐(と)すものは大黄甘草湯之を主(つかさど)る」と記載されており、消化管の塞がりを原因とする嘔吐に有効であると言われています。現代医学では、そうした原因の嘔吐にというよりは、便秘症、ことに常習性便秘に用いています。
また、便秘に伴い「頭が重い」とか「のぼせる」とか「湿疹やニキビができる」とか、消化器症状以外の症状に悩まされることもあるでしょうが、そうした症状もお通じがよくなると解消するものと考えられ、大黄甘草湯の効能・効果として期待できます。

大黄(だいおう)

大黄(だいおう)

甘草

漢方調製用の生薬刻みとしての「甘草」

一緒に配合されている甘草は、大黄による瀉下作用の痛みを和らげる作用があると言われ、また一方で大黄の作用を増強するように働くのだとする研究報告もありますが、この二つの生薬の組み合わせになった理由はまだわかりません。
最近、基礎研究が進み、大黄甘草湯の瀉下作用のメカニズムとして、細胞膜を介した水の移動に重要なチャネルであるアクアポリン(※1)の関与や腸内細菌叢(※2)の変化などが明らかにされており、単に腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を促すだけではないこともわかってきています。

ちなみに、テレビのコマーシャルでおなじみのタケダ漢方便秘薬は、この大黄甘草湯そのものです。

また、大黄(だいおう)にアロエ末を加え、さらにセンノシドのカルシウム塩を入れた生薬製剤が民間薬として古くから知られています。
「健のう丸」(丹平製薬株式会社)という名前の便秘薬です。興味のある方は、お近くのドラッグストアで探してみてください。

(※1)体の細胞膜に存在し水を通過させるという特別な性質をもつタンパク質

(※2)ヒトの腸管内にある多種多様な腸内細菌が菌種ごとに構築する微生物生態系。腸内フローラとも言う

(2019年1月29日)

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