特設サイト第48回 「いわゆる健康食品」について

毎年のことですが、慌ただしく新学年が、そして新学期が始まりました。
元気な新入生を迎え、気が引き締まる思いですし、いつもながらに緊張します。

今年の4月は例年になく日中の気温が上がる日が多く、朝方や夜との気温差も激しく、体調管理にも苦慮されたのではないかと思います。
さて、皆さんは、日頃、健康の維持や増進のために何かしていますか。
きちんと食事を摂る、運動をする、しっかりと睡眠をとるなど、いろいろあるかと思います。
あるいは、サプリメントや健康食品をお使いになることもあるかもしれません。
そこで、今回は健康食品の話です。

健康食品という言葉はご存じだと思いますが、「いわゆる健康食品」という表現には馴染みがないと思います。とくに、「いわゆる」という部分です。
健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義はなく、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです。

「健康食品」のホームページ(厚生労働省)

食品は、食品衛生法により、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に規定する医薬品、医薬部外品以外のすべての飲食物であると規定されており、医薬品との大きな違いとして「食品は疾病の診断、治療、予防に関する効能・効果をうたってはならない」という大原則があります。そして、この大原則に立った上で、「食生活を通して健康の維持・増進機能を備えていることが確認された食品であれば健康表示を認める」とされたものが特定保健用食品(トクホ)です。この他、ビタミンやミネラルを対象とした栄養機能食品や2015年に新設された機能性表示食品を含め、保健機能食品と呼びます。

  • 医薬品と保健機能食品(南江堂 新訂生薬学より改変)
    医薬品と保健機能食品(南江堂 新訂生薬学より改変)

健康食品という言葉で認識されるものは、この法令上で保健機能食品として取り扱われるものと、法令上では一般の食品として取り扱われるものがあり、後者を「いわゆる健康食品」と呼ぶのです。つまり、健康食品といいつつも、実際には効能・効果をうたうことはできず、ただなんとなく体に良さそうなイメージを打ち出した「一般食品」なのです。一種の印象操作ですね。

種々のアンケート調査によると、国民の半数程度が健康食品を摂っていると回答しています。皆さんは何かを期待して健康食品を口にされていると思いますが、意外にも健康被害を受けてしまう可能性があることを考えたことがあるでしょうか。健康食品が本当に必要なものかどうか、今一度考えてみてはいかがでしょう。
食品安全委員会が、健康食品の安全性について19のメッセージを出していますので、一度ご覧ください。

いわゆる「健康食品」に関する メッセージ

3月末に金沢で行われた日本薬学会第138年会でも、健康食品に関するシンポジウムがありました(シンポジウムS56いわゆる「健康食品」について薬剤師が知っておくべきこと)。そこで、食品安全委員会の方がおっしゃった「健康食品は健康な人が摂るものであり、病気の人のためのものではない」という言葉はとくに印象的でした。
しかし、入院患者のうち約4割の方が何かしら健康食品を摂取しているとか。
少しでもよくなりたいという気持ちは痛いほどわかります。でも、病気を治すのは「薬」と「養生」です。

薬学部を卒業すると、薬剤師国家試験の受験資格を得ることができますが、申請すれば食品衛生管理者の資格を取得できるということは案外知られていません。ヒトが口にするものは「食品」と「薬」の二つだけです。薬学部を卒業するということは、「薬」だけでなく、「食品」にも責任を持つことだと思います。

(2018年5月15日)

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