特設サイト第47回 漢方処方解説(18)当帰芍薬散

  • 当帰芍薬散
    当帰芍薬散

今回取り上げる漢方処方は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)です。

当帰(八事キャンパス)

当帰(八事キャンパス)

本処方は、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)、川芎(せんきゅう)、白朮(びゃくじゅつ)の6種の生薬から構成されています。

処方名が、これまので「○○○湯」ではなく、「散」となっているのにお気づきですか。
これは、上記の生薬を混合し、薬研(やげん)などを用いて粉末にしたものをそのまま服用する、という意味ですが、ときには他の処方と同じく煎じて服用することもあります。
医療用、一般用を問わず漢方エキス製剤は、それぞれ生薬を煎じた抽出エキスを原末とし、賦形剤を加えて細粒や顆粒剤にしたものですから、この処方の場合は「当帰芍薬散料」というように特別な表示がなされています。この「料」の一字が「煎じた」当帰芍薬散ですよという証です。
一度ドラッグストアで、外箱の表示を見てみてください。きちんと「料」の文字が書いてあるはずです。

芍薬(八事キャンパス)

芍薬(八事キャンパス)

さて、この処方は、私たちの身体を正常に動かかすための生理物質である「気・血・水(津液)」の中の「血」の不足を補い、「水(津液)」の滞りを解消するようにと作られたものです。構成生薬の中では、当帰や芍薬、川芎が「血」を補い、茯苓、沢瀉、白朮が「利水」に働くので、それぞれの役割をもつ生薬群が二つ合わさってできていると言えます。 現代医学的には、貧血や倦怠感、頭重や頭痛、めまいや肩こりなどを伴う更年期障害、月経不順、月経困難、不妊症、妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、腹痛など)など婦人科にてよく用いられる処方です。

婦人科は、漢方薬がよく用いられる診療科で、他にも加味逍遙散(第25回参照)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などがあります。当帰芍薬散が主に「水」の循環を正すとすれば、これら二つの処方は、それぞれ「気」あるいは「血」の循環を正す作用があると考えて使い分けを考えるとよいそうです。

(2018年3月26日)

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