特設サイト第44回 オンジエキス製剤 ~もの忘れに効果あり?~
年の瀬に、生薬分野における今年のトピックスをお届けします。
生薬や漢方薬は、厚生労働行政上は「天然物医薬品」というカテゴリーに区分されます。新薬とか、西洋医薬品と呼ばれる「合成医薬品」とは区別されるものです。
その中には、植物や動物、鉱物の「くすり」となる部分を乾燥した生薬そのものを指す「原料生薬」はもちろんのこと、漢方薬をエキス製剤化した「漢方製剤」とその他の「生薬製剤」があります。
この「生薬製剤」の中では、「足のむくみやだるさなどの軽い静脈循環障害に赤ブドウ葉乾燥エキスを」とか、「乳房のはりやイライラ、気分変調などの月経前症候群にチェストベリー乾燥エキスを」というように、ヨーロッパで実績のある生薬エキス製剤を日本でも利用できるようにした「西洋ハーブ医薬品」の導入が話題でしたが、今年はオンジという生薬のエキスが話題となりました。
6月・7月頃に新聞紙上にも出ていましたから、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。タイトルとして、「もの忘れに効果あり? 続々と市販薬が」というようなものでしたが、いかがでしょうか。
「キオグッド」とか、「ワスノン」、「アレデル」と、キャッチーな(?)名前の一般用製剤ですが、これらはオンジの抽出エキスでした。オンジは、「遠志」と書き、主に中国北部を産地とする多年草「イトヒメハギ」の根を乾燥させたものです。その名称は、「この薬を服用すれば、能く(よく)智を増し、志を強くする」という薬能に由来するとされ、もの忘れや健忘に効果があると考えられています。
二種以上の生薬を組み合わせた漢方薬は、医療用あるいは一般用エキス製剤として数多く普及していますが、単一の生薬をエキス(単味生薬エキス)にした医薬品はあまり出ていません。平成27(2015)年に「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイドライン(単味生薬製剤承認基準)」が策定され、オンジはその一つであったことから、各社が「もの忘れ改善薬」として商品化したのです。単味生薬として活用できる生薬は、煎じるもので20種収載されていますから、今後またいくつか商品化されてくることでしょう。
今回のオンジエキスに関しては、厚生労働省より「加齢による中年期以降の『もの忘れ』にというもので、いわゆる『認知症』とは違います」という注意喚起が求められています。
認知症として適切な治療を受ける機会が損なわれないようにということですが、消費者としては判断し難いことですよね。わかるような、わからないような…。
そんなときこそ、薬剤師に聞いてみてください。
一番身近な医療関係者ですから。
(2017.12.26)