特設サイト第46回 3年目の春

暖かな日が続いていましたが、3月のはじまりは一転して春の嵐のようでした。

八事キャンパスのコブシ

八事キャンパスのコブシ

薬学部では、主な入学試験や第103回薬剤師国家試験も終わり、ホッと一息かと思いきや、年度末の日本薬学会第138年会への準備や間近に迫った新学年、新学期に備えて、忙しい日々を過ごしております。

八事キャンパスに植えた薬用植物も3年目を迎え、うまく育ったもの、育ちつつあるもの、結局育てられなかったものと、いろいろなストーリーを見せています。
今回は、つぼみを膨らませつつあるコブシを紹介します。

看板にありますように、モクレン科のコブシのつぼみを鼻炎や鼻づまりの改善に生薬として用います。辛夷(シンイ)という名で呼ばれますが、日本では同じ漢字を「コブシ」とも読むそうです。

辛夷(シンイ)は、漢方処方に辛温解表薬(※1)として配合され、上焦の風熱を散ずる(※2)とされていますが、いわゆる発汗薬ではなく、つまっている孔(あな)を通じさせる開竅薬(※3)として使われます。

コブシの表示

コブシの表示

以前も本コラム(第11回「アレルギー性鼻炎と漢方」)でご紹介したように、副鼻腔炎などに用いられる葛根湯加川芎辛夷(かっこうんとうかせんきゅうしんい)として、あるいは同じように副鼻腔炎や慢性鼻炎に用いられる辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)などとして用いられる重要な生薬です。
風邪をひいて、水のような鼻水の時期を過ぎ、黄色く、ネバネバした鼻汁になってきたときなどに効果ありと説明されますし、鼻づまりにはよく効きます。

八事キャンパスでも、その辛夷をようやく観察できるようになりました。
非常に枝ぶりもよく、キャンパスに入ると同時に目に入るように植栽したものの、昨年まで一輪か、二輪しか咲かず、心配しておりましたが、今年はたくさんつぼみをつけております。
同時に、葉芽もつけていますが、大きさが違うので、判断できると思います。

ここまで来るのに3年かかりました。
いきものですし、なかなか思うようにはいきません。

結果が出るまで時間がかかるのは、教育や研究も同じです。 コブシのつぼみを見て、焦らず、慌てず、諦めずという言葉を今更ながらに思い出しました。

名古屋の街では、街路樹として、シデコブシやモクレンも植樹されていますから、これからの季節いろいろなところで、つぼみも花も楽しむことができると思います。

年度末の何かと忙しく、また気ぜわしい毎日が続きますが、冬から春への季節の移ろいを楽しみながら、新たな気持ちで次の年度を迎えたいものです。

  • コブシのつぼみと葉芽
    コブシのつぼみと葉芽

(※1)軽い発熱・強い悪寒・頭痛・関節痛・鼻水などに対して、体表血管を拡張して発汗させて表症(体表に現れる症状)を取り除くために用いる薬

(※2)上焦とは、人体と臓器を上・中・下に分ける部位分類の一つで、胸部、頭部および心肺を指し、「上焦の風熱を散ずる」とは、風邪をひいて発熱し、寒け・せき・鼻水などの出る症状を治めること

(※3)詰まった穴を開く薬

(2018年3月1日)

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