特集外国人との共生がもたらす未来と、そのメリット / ドイツに見る移民社会の先進例

外国人との共生がもたらす未来と、そのメリット

外国人受け入れ体制と今後の課題について、移民・人権問題に詳しい近藤教授に話をうかがった。

法学部法学科

近藤敦 教授

Astushi Kondo

名古屋市生まれ、豊橋市育ち。1989年、九州大学大学院法学研究科公法学専攻博士後期課程満期退学。九州大学法学部助手などを経て、2005年から現職。2017年から法学部長。移民政策学会会長、名古屋多文化共生研究会会長。著書に「人権法」「外国人の人権と市民権」「多文化共生政策へのアプローチ」など。

日本の未来を考えると外国人を受け入れないと成り立たない

下の表は、2050年までにどれくらい人口が減少するのかを表したものですが、ご覧の通り、日本がダントツなんですね。生産年齢人口が減ることは、国にとって非常に大きなダメージです。少子高齢化など、日本と似た課題を抱えているドイツと韓国は、生産年齢人口の減少を食い止めるため、すでに移民政策に動き出しています。

移民の国であるアメリカ、オーストラリア、カナダは30年後も安定して人口が増え続けています。日本ではまだ移民という言葉は使っていませんが、現在日本が抱えている課題を解決するためには、諸外国から働き手を受け入れざるを得ないのは明らかです。

総人口、生産年齢人口の2015年から2050年の推移予測

総人口 生産年齢人口
日本 -1918万人 -2249万人
韓国 -14万人 -1017万人
ドイツ -247万人 -903万人
フィンランド 38万人 5万人
スウェーデン 186万人 69万人
フランス 615万人 -46万人
イギリス 998万人 192万人
カナダ 900万人 218万人
オーストラリア 939万人 430万人
アメリカ 6966万人 2479万人

日本の言語、文化の教育が急務

外国人受け入れにあたって必要なこととは?

早急に取り組むべきは日本語教育と日本語教師の養成です。よく外国人労働者の孤立が問題に上がりますが、それを防ぐには、ただの働き手としてではなく一人の人間、一家族として地域社会で外国人を受け入れていくことが重要。そのためには、日本語と、日本の文化やルールを教える場を設けなければなりません。諸外国ではほぼ無料でそうした場を提供している国も多いのですが、日本ではまだそうした取り組みはありません。日本人の側も、外国人の文化や習慣の違いを理解する必要があります。

新たな仕事やニーズが生まれる可能性

日本人の職が奪われるのでは?

外国人労働者が増えることで、日本人の職が奪われるという意見もあります。もちろんそうした可能性は否定しきれませんが、一方で、外国人が増えることによって新たな仕事やニーズが生まれることも期待されています。世界的に見ても、移民を受け入れる方が経済的にプラスに働くとの研究結果が多く、外国人の受け入れは、労働力不足を解消するだけではなく、ビジネスにおいてもポジティブな要素が多いと思います。

社会保障制度の支え手に

社会保障の負担が増えそうで心配です

近年、社会保障の財源はどんどん消費税にシフトしています。しかし、人口が減るというのは消費人口も減るということ。例えばAIなどのテクノロジーを使って生産性を保てたとしても、消費人口が減れば税収が減り、社会保障がさらに圧縮される可能性もあるわけです。外国人を多く受け入れると社会保障制度が悪用されるんじゃないかと懸念する意見もありますが、人口減のままで社会保障制度を成り立たせるのが困難なのは事実。日本の社会保障を支えてくれる仲間として、外国人労働者を歓迎するメリットのほうが大きいと考えています。

グローバル化を身近に体験する機会

働き手が増える以外のメリットは?

日本で産まれた外国人の子どもたちは、家では外国語、外では日本語を自然に使い分けているケースが少なくありません。そういった子どもたちが活躍できる場があれば、国内のグローバル化がもっと進むように思います。

外国人労働者が多い地域では、地域や住宅管理会社、大学などが連携して外国人と地域社会をつなごうという動きも出てきています。例えば、大学生は安い住居を提供してもらう代わりに、その地域に住む外国人との交流ボランティアに参加する。社会貢献をしながらグローバルな視点も身につく、一石二鳥の取り組みです。

ドイツに見る移民社会の先進例

移民を受け入れざるを得ない時代と語る長澤教授。長年、移民問題と向き合ってきたドイツから学ぶ。

理工学部 教養教育

長澤崇雄 教授

Takao Nagasawa

群馬県沼田市出身。1981年、東京外国語大学 外国語学部 ドイツ語学科卒業。1983年、東京外国語大学大学院 外国語学研究科ゲルマン系言語専攻修士課程修了。1991年から名城大学理工学部教養教育講師(ドイツ語担当)。2001年から1年間ドイツ連邦共和国バンベルク大学ドイツ文学部在外研究員。2007年から現職。

2018年度後期からスタートした「名城大学チャレンジ支援プログラム」で、学生同士が「移民」について議論しました。

時代を主体的に生き抜く力を養い、自己実現を支援する「名城大学チャレンジ支援プログラム」。池上彰教授をスーパーバイザーに迎え、アクティブラーニング形式のセミナーや海外研修を経験しながら自己を高めることを目的としている。

本プログラムへの参加を希望した学生の中から2次選考を通過した35人が1期生に選ばれ、長澤教授の指導の下、移民の受け入れについて、容認派と非容認派に分かれて議論を展開した。
感想をピックアップすると...

  • 容認派でしたが、非容認派の意見を聞いて、日本にとって本当にいいことなのかを考えさせられました。自分の考えを深めるためには、自分と対立する意見にも耳を傾けることが大切だと感じました。
  • 経済、雇用、グローバルといった大きな視点ではメリットが大きいが、治安や教育といった身近な視点では不安があると感じました。議論を交わしたからこそ、両方の視点を発見できたのだと思います。
  • 当初は反対でしたが、容認側の意見を聞いて、日本の伝統や文化を再発見できるなどのメリットを知りました。世界の移民政策などにも目を向け、日本の未来についてさらに考えたいと思いました。

読者の皆さまも、これから直面する「移民問題」について家庭や職場で話し合ってみてはいかがでしょうか。

「一時的」が長期化

受け入れの背景は?

第2次世界大戦後の労働力不足です。西ドイツが国外から労働者を受け入れ始めたのは1950年代後半のこと。ドイツ人は彼らをガストアルバイター(ゲストワーカー)と呼び、あくまでも「ガスト(お客)」であり、労働力として「一時的に」滞在するだけで、契約が満了すれば自国へ帰ることを前提としていたわけです。ところが彼らは現地で結婚したり家族を呼び寄せたりして滞在が長期化し、実質的に「移民化」していきました。最終的にガストアルバイターはトルコ系が最多となりました。

ドイツ人の就きたがらない仕事に従事

その後の変遷は?

当初は大手企業で単純労働に従事していた彼らの多くは、石油危機を契機に外国人労働者の募集が停止された1973年以降、景気低迷により、ドイツ人の就きたがらない仕事(石炭の採掘やごみ収集など)に携わることになります。それまでも彼らはドイツ人の平均賃金を下回る時給で働いていましたので、結局のところ生産力の向上と賃金の抑制に貢献し、企業の利益を高める存在として、西ドイツの経済成長に利用されたと言えるのです。

トルコ人労働者とその家族は、次第に「移民化」し、「客」でなくなるにつれ、ドイツ人社会における「異物」として意識されつつも、どうにかドイツ社会に溶け込んでいました。しかし、1990年の東西ドイツ統一以降、東欧からの労働者の急激な増加と、近年の中東からの難民の流入によって、再び彼らを「異物視」する傾向が顕在化しています。

「異物視」を乗り越えて

日本に生かせる教訓は?

これからの日本人にとって、国外からの労働者の受け入れは避けて通れぬリアルな問題です。それは、例えば地域の隣人として、あるいは職場の同僚として彼らを受け入れ、彼らと共生することを意味するからです。時としてさまざまなあつれきが生まれるでしょうし、それをきっかけに彼らを「異物視」して疎外し、挙げ句排除しようとする動きが現われないとも限りません。しかしその傾向が、われわれの中の「社会的弱者」(さまざまなハンディキャップを持った人々)への「異物視」とも同根のものである以上、関心を抱かずに放置することはできないと思うのです。

従って、「移民」を巡るドイツの体験や取り組みを、単に「失敗」として片付け、議論を停止するのではなく、そこから学んで日本に生かせる教訓は、まだまだ多いと考えています。

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