特設サイト第79回 漢方処方解説(40)柴朴湯

 今回ご紹介する処方は、前回の柴苓湯(さいれいとう)に引きつづき、小柴胡湯(しょうさいことう)の合方剤として日本薬局方に収載されている柴朴湯(さいぼくとう)です。柴苓湯の場合は、小柴胡湯と五苓散(ごれいさん)の合方でしたが、柴朴湯では小柴胡湯と半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の合方です。

小柴胡湯(しょうさいことう) 小柴胡湯(しょうさいことう)
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

 柴苓湯は、「万病回春」(1587年)で初出となった処方であり、中国で生まれた処方ですが、柴朴湯は近代日本で創生されたものとされています。元々、小柴胡湯合半夏厚朴湯と称したものが、徐々に省略されて柴朴湯と呼ばれるようになったといわれます。いろいろと書籍を調べてみますと、昭和初期に(*1)湯本求心(ゆもときゅうしん)先生が百日咳の治療に用いたとする論文があり、それが原典ではないかとされます。

 小柴胡湯との組み合わせとなっている半夏厚朴湯は、第21回の漢方随想録にて紹介したように、本来「気の巡り」が咽頭のあたりで滞り、咽喉頭異物感や不安焦燥感、軽症抑うつ状態を適応とする処方です。「梅核気(ばいかくき)」というような喉に何かくっついているような異物感を感じ、どこか落ち着かない不安感や焦りに悩まされるときに有用な処方ですが、小柴胡湯と合わさることにより、気管支ぜんそくや気管支炎への適応となり、また不安障害や咽喉頭異常感症に用いる処方と言われています。

 小柴胡湯を用いる際のサインである「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」があり、不安傾向のある方で、切れにくい単が喉につかえて息苦しいと訴えるような場合によいとされ、軽症の小児や成人の喘息に応用されています。また、書籍によれば、咳喘息の発作症状を恐れるが故に不安になり、そのため食欲も元気もなくなった患者さんに有用だったという逸話があります。

 本処方に関しては、多くの基礎研究や臨床研究がありますが、処方の成り立ちもその応用のされ方も非常に興味深い処方だと思います。

 (*1)湯本求心:明治~昭和初期の漢方医学者。 

(2021年5月17日)

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