特設サイト第83回 薬研で作る七味唐辛子

10月も終わりに近づき、寒い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
秋を楽しむというよりは、一足早い冬となっています。

薬研と材料

薬研と材料

先日、あいち健康の森薬草園で、「秋の薬草フェスティバル」が開催されました(令和3年10月17日(日)10時~15時)。その中で、愛知県薬剤師会が主催するイベントのお手伝いをしてきましたので、ご紹介いたします。

今回のイベントでは、まず愛知県薬剤師会の専務理事である加藤廣人氏による「大麻とケシ」という座学がありました。ともに、わが国では麻薬に指定される植物で、その栽培や販売が規制されています。座学の中では、大麻やケシと類似植物の見分け方や見つけたときの対処法なども紹介され、とても興味深い内容であったと思います。

その後、この麻の実やケシの実が配合されることもある七味唐辛子を作ってみようと、金城学院大学薬学部の永津明人教授を講師に迎えて、「薬研(やげん)」を使った七味唐辛子の調製を行いました。

材料として用いたのはすべて乾燥品で、トウガラシの実、サンショウの果皮、ミカンの果皮、ゴマの種子、麻の種子、シソの葉、そしてショウガでした。それぞれ薬味やスパイスでありますが、まさに「生薬」です。ちなみに、それぞれの材料を生薬名で表しますと、蕃椒(ばんしょう)、山椒(さんしょう)、陳皮(ちんぴ)、胡麻(ごま)、麻子仁(ましにん)、蘇葉(そよう)、そして生姜(しょうきょう)となります。組み合わせの基本は、「二辛五香」だそうで、トウガラシ、サンショウを辛味の二味としています。蕃椒は、カプサイシンという辛味成分を含む健胃薬ですし、山椒もまたサンショオールという辛味成分を含む芳香性・辛味性健胃薬です。これらの成分は、本年度のノーベル医学・生理学賞の受賞対象となったTRP受容体に作用する化合物です(詳しくはまた別の機会に)。さらに、陳皮も芳香性・苦味健胃薬ですし、胡麻は強壮、解毒薬として知られます。麻子仁は下剤として利用されるもので、蘇葉や生姜は芳香性健胃薬であり、かつ発汗・解熱剤です。概して、胃腸の薬、さらにお腹から身体全体を温める働きをもつ「くすり」と言えるのではないでしょうか。
それぞれを薬研に移し、細かくすりつぶしていったのですが、最初は慣れない道具に悪戦苦闘し、額に汗を浮かべながらの作業となりました。コロナ禍での講座でしたので、事前予約の10名という少数で、座学とともに90分という短い時間でしたが、みなさん楽しんで七味唐辛子を作っていました。参加された方はいかがでしたでしょうか。お作り頂いた七味を楽しんでいただいていますでしょうか。

あいち健康の森薬草園では、こうしたイベントを毎月行っています。感染状況次第ではあると思いますが、いつもの状態に戻れば、もう少し多くの方々にご参加いただけると思いますので、どうぞご来園ください。

ミル付き容器と七味

ミル付き容器と七味

【追記】
それぞれの生薬を少しずつ分けていただいて、わが家ではトウガラシとシソの葉を小さく裁断し、すべてをミル付きの容器に移して使ってみました。挽きたての香りや辛味が鮮烈なものとなり、これからの鍋物の季節、楽しみが増えたように思います(^^)。

(2021年10月27日)