特設サイト第81回 漢方処方解説(41)人参養栄湯

今回、ご紹介する処方は人参養栄湯(にんじんようえいとう)です。

この処方は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)(第22回参照)や十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)(第39回参照)とともに「補剤」と呼ばれる処方群の一つであり、病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血に用いるとされています。

  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
    人参養栄湯(にんじんようえいとう)


構成生薬は、十全大補湯とよく似ており、十全大補湯から川(せんきゅう)を除き、遠志(おんじ)、五味子(ごみし)、陳皮(ちんぴ)を加えたものとなっています。すなわち、人参(にんじん)、地黄(じおう)、当帰(とうき)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、遠志、陳皮、黄耆(おうぎ)、甘草(かんぞう)、五味子の12味からなる処方です。また、本処方の応用される疾患や症状は十全大補湯とよく似ており、鑑別が難しいとされます。人参養栄湯もがんや手術などで体力の低下した状態や難治性あるいは再発性の感染症などに応用されることが多く、抗がん剤の副作用としての骨髄抑制や食欲不振、全身倦怠感や末梢性神経障害などにも応用されています。十全大補湯との違いという点では、構成生薬の違いに注目して、慢性的な呼吸器症状や気鬱や不眠にも用いることができることが挙げられています。その中心となる生薬が「遠志」です。

遠志は、ヒメハギ科のイトヒメハギの根を用いる生薬で、成分としてはサポニンを含有します。臨床的には、強壮、鎮静、去痰薬とされており、人参養栄湯のほか、医療用漢方エキス製剤の中では帰脾湯(きひとう)や加味帰脾湯(かみきひとう)に配合され、これらの処方もまた不眠やうつ状態に応用されています。また、最近、一般用単味生薬エキス製剤として、「中年期以降のもの忘れに」と遠志の単味生薬エキス製剤が出ています(第44回参照)。

補中益気湯や十全大補湯の作用についての基礎研究は、私どもの研究室でも行っておりますが、この人参養栄湯についての基礎研究はまだ行っておらず、代表的な二つの補剤と比較して、どのような特性をもつのか、あらためて研究してみようかと関心を寄せているところです。

(2021年7月30日)

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