特設サイト【名城大学通信第51号】[附属高校レポート]

高校と大学、高校と高校のつながりで進める、附属高校のグローバル化

  • 全員で記念写真に納まる参加者
    全員で記念写真に納まる参加者

附属高校国際クラス生徒と県内5校の高校生が、SGHミーティングで活発な議論を展開。

  • 宮田未稀実行委員長
  • 宮田未稀実行委員長

  • 開会式であいさつする久保全弘名城大学附属高校校長(右端)
  • 開会式であいさつする久保全弘名城大学附属高校校長(右端)

 名城大学附属高校は2015年12月19日、文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH) 認定校として、東海4県の SGH指定校を同校に集め、「SGHミーティング」を初めて開きました。

 附属高校国際クラスの4人をはじめ、指定校の愛知県立旭丘高校、名古屋大学附属中・高校、春日丘高校、岐阜県立大垣北高校、準指定校にあたるアソシエイト校の名古屋国際中・高校などから計約100人が参加しました。

 1号館8階大会議室で開会式があり、本学の吉久光一学長は「実践力を身に付けた学生を育てたい。大学としてもグローバル化を進めていく」とあいさつしました。 本学との連携で経営学部などの教授陣や愛知のものづくりを支える愛知中小企業家同友会の会員経営者を迎え、「中部地域から見たグローバル化」をテーマに4つの分科会で高校生たちが活発に議論しました。

 分科会では高校生たちが、講師の助言や問題提起をもとに、学校混成の4、5人でグループを組み、多面的・複合的に話し合いました。最後に各分科会で選ばれた1グループずつが成果を全体発表しました。

経営学部の橋場教授が担当する分科会は、「『日本的』な働き方・働かせ方とグローバル化」がテーマ。

  • 分科会Aで日本型労働について解説する橋場教授(左端)
  • 分科会Aで日本型労働について解説する橋場教授(左端)

 経営学部経営学科で人的資源管理論を担当する橋場俊展教授担当の分科会Aは 「『日本的』な働き方・働かせ方とグローバル化」がテーマ。 橋場教授は日本特有の雇用慣行として、新規学卒一括採用で、入社後に頻繁に異動し多様な仕事を経験すること、チームワークで質の高いサービス・製品を提供できるという長所がある一方で長時間労働や過労死・過労自殺が問題になっていることなどを講義しました。そのうえで「タレント(有能な人材)を確保し、定着させるには日本的な働き方・働かせ方の何を維持し、何を見直すべきか」と問題提起しました。

 各グループは模造紙にメモを 貼り付けるなどして、維持する点、見直す点を提案し合い、「年功序列で経験を積んだ人 が若年のタレントに自分の経験を伝えることで、タレントはさらに活躍できる」「長時間労働は見直す」「成果主義を強くする」などグループごとに結論を発表し合いました。

愛知中小企業家同友会の経営者も、生徒の輪に参加。

  • 経営者を招く橋渡しをした福島さん
  • 経営者を招く橋渡しをした福島さん

  • 分科会Bで基調講演する加藤さん(右端)
  • 分科会Bで基調講演する加藤さん(右端)

 分科会Bは経営学部契約職員(マッチング・ コーディネータ)の福島敏司さんが橋渡しして愛知中小企業家同友会の会員経営者が5人参加しました。テーマは「グローバル展開をするモノづくり中小企業〜採用と活かし方 〜」。名古屋市瑞穂区の切削・研削加工業「エイベックス」の加藤明彦会長が基調講演しました。加藤さんは「現在の社員は必ずいなくなる」を前提とした人材育成論を述べました。「従業員は定年で辞めていくので、技術や経験を後輩に伝えてもらう。本人もあてにされることを喜び、誇りに思う。後進を指導するのが楽しくなる」とモノづくり企業の人材の生かし方の一端を紹介しました。

 グループごとの議論のテーマは「私たちの夢」。愛知県稲沢市の機械部品製造業「高瀬金型」の瀬喜照社長、名古屋市北区の樹脂部品製造業「オプコ」の尾浩一社長、同県小牧市の金属部品製造業「三洋電子」の青木信真早社長、同県江南市の自動車部 品製造業「協栄産業」の大島良和社長(理工学部建築学科卒)が各グループに加わって推進役を務めました。ベトナム人のグェン・ヴァンハイさん(大学院経営学研究科修了)も手伝いました。

 全体発表では「人の役に立つものを作るため、私はエンジニアになりたい」「人の笑顔を見るのが好きなので、人を笑顔にする企業を設立したい」などの決意が表明されました。

ネパール出身の農学部トゥラダール特任助手は自分の経験に根差した判断をアドバイス。

  • 議論の輪に加わるトゥラダール特任助手
  • 議論の輪に加わるトゥラダール特任助手

 分科会Cは「外国にルーツをもつ人と暮らす〜中部地域の例〜」をテーマに、農学部のアスタ・トゥラダール特任助手が講師を務めました。トゥラダール特任助手はネパール出身で、大学院農学研究科で博士号を取得。「グローバル化時代にあって、異なる国や文化、価値観をもつ人たちと共存するにはメディアや型にはまった情報だけで物事を判断せず、自分の経験に根差した判断をすることが一番いい」と強調しました。

 分科会の生徒の中には、名城大学附属高校国際クラス1年の新井咲菜さんがいました。父親がモロッコ人、母親が日本人の新井さんはイスラム教徒で、チャドルを被って授業を受けています。全体発表で新井さんは「中学生の時、学校の給食で豚肉が出ましたが、私は食べられないので、アレルギーだとうそを言いました」と自らの体験を明かし、「日本人は外国人に対する"免疫"がまだまだ足りない」と指摘しました。

外国語学部長(※)のクマーラ教授も講師に加わり、日本人の英語学習を考える。

  • 議論を見守るクマーラ教授
  • 議論を見守るクマーラ教授

 分科会Dは「グローバル時代の若者の学び」をテーマに、外国語学部長(※)のアーナンダ・クマーラ経営学部教授が講師になりました。クマーラ教授は日本人の英語学習の従来の問題点とその改善法などの課題を提供しました。生徒たちは改善点として、課外活動を増やすことや自分の興味のあるものから英語に触れることなどを挙げました。
※2016年4月就任

 閉会式では、鈴木勇治名城大学附属高校副校長が「来年度はナゴヤドーム前キャンパスで第2回を開きたい」とあいさつして締めくくり、全員で記念撮影をしました。

  • 全体発表を聞く参加者
    全体発表を聞く参加者

集団討論で生まれたつながりをチカラに、将来は充実した大学生活を。

  • ディベートの意義を語る橋場教授
  • ディベートの意義を語る橋場教授

 橋場教授は分科会のディベートについて「自分たちで主体的に調べ、議論して結論を出す作業を高校時代から経験させるという取り組みは先進的であるし、大学教員という立場からすれば大変心強い。経営学部でもディベートを含めたグループワークを基盤とするフューチャースキルズ・プロジェクトというアクティブラーニング型の講座を導入しています。今年度は2ゼミ1クラスでしたが来年度は6ゼミ3クラスに拡大します。この講義は外国語学部でも取り入れられる予定です。集団討論するためには勘所をおさえる術が必要です。これを高校・大学時代に体得しておくと、チームワークにおいてリーダーシップを発揮できるため、こうした活動の経験は貴重です」と、その意義を強調しました。さらに、橋場教授の講評で、高校生の取り組み姿勢を高く評価しつつ、「今日の経験を生かして将来充実した大学生活を過ごして欲しい」と高校生たちにエールを送るとともに、分科会発表においてすべてのグループが言及していたワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)推進の必要性について今後も考え続け、その実現のためともに行動していこうと呼びかけました。

本記事は2016年春発行の「名城大学通信第51号」を一部抜粋したものです。
役職等はその当時のものとなっております。予めご了承ください。

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