特設サイト第128回 かぜと漢方薬
もうすぐ師走となり、例年より早くインフルエンザの流行が始まっています。
今回はインフルエンザだけでなく、かぜに用いる漢方薬をおさらいしたいと思います。
漢方医学における古典には「傷寒論」という処方集がありますが、もともとは「傷寒」とよばれる感染症(チフスと言われていますが)に対して有効な処方が収載されています。その最初に収められている処方は「桂枝湯(けいしとう)」です。身体を温めるケイヒとショウキョウを中心にシャクヤク、タイソウ、カンゾウを含めた5種の生薬からなる処方です。頭痛、悪寒、発熱があり、自然発汗のあるものに用いるとされています。また、後背部にこわばりを感じるときにはカッコンを足した桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)がよいとされ、さらに自然発汗がない場合には、皆さんご存じの「葛根湯(かっこんとう)」の出番となります。この鑑別は自然発汗があるかどうか、また後背部のこわばりがあるかどうかです。
また、はっきりとした症状がなく、なんとなくかぜを引いたかもしれないといった場合には、香蘇散(こうそさん)をお試しいただくのがいいでしょう。一方で、高齢者ではっきりとした発熱はないものの、背中がぞくぞくするような場合には麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が適することが多く、ぞくぞくしていた背中も温まると思います。もちろん、インフルエンザのように、いきなりの高熱で症状がはじまり、筋肉や節々が痛むという場合には麻黄湯(まおうとう)がいいと思います。
さらに、さらさらと水のような鼻汁に悩まされるようなかぜの場合には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)がいいですし、逆に鼻閉に悩むときには葛根湯加川芩辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)がよいとされます。咳の症状でお悩みの場合には、小青竜湯もいい場合がありますが、乾いた咳で咳きこむときに顔が真っ赤になるくらいの強さがあるときには麦門冬湯(ばくもんどうとう)がいいとされますし、自然発汗があり、口渇もあるときには麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、さらに痰がからむようなら五虎湯(ごことう)もよいと思います。
また、かぜをこじらせてしまったときには、小柴胡湯(しょうさいことう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が良いと思いますし、もうかなり治ったにもかかわらず、咳や痰が残って夜眠れないときには竹如温胆湯(ちくじょうんたんとう)といった処方が適すると思います。
カゼ漢方対策ガイド
<症状別>
<経過別>
出典:国立医薬品食品衛生研究所生薬部「漢方セルフメディケーション」https://www.kampo-self.jp/
このように、いろいろな症状や経過に対して、さまざまな処方があるので、なかなか自分では選べないと思われるかもしれません。漢方薬メーカーも使い分けの情報をパンフレットでも発信していますし、またホームページでもわかりやすく提供しています。もちろん、街のドラッグストアにも薬剤師がいますので、お気軽に相談していただいて構いません。すぐにわからなくても、調べ方はご存じのはずですから。
近年、国内で流行しているインフルエンザウイルスはA(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型(香港型)とB型(山形系統とビクトリア系統)の4種類ですが、今年は海外で拡大しているH3型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたというニュースが先日流れてきました。ウイルス感染を予防するためにも、体力を養う食事と十分な睡眠、そしてコロナ禍で培った手洗い・うがいなどを励行し、これから年の瀬を乗り切っていきましょう!
(2025年11月28日)
カゼ(症状別)に対する漢方対策ガイド
カゼ(経過別)に対する漢方対策ガイド

