特設サイト第130回 漢方処方解説(74)排膿散及湯
長期にわたって寒気が居座り、防寒対策だけでなく、朝夕の道路事情も気になる毎日です。インフルエンザもB型が主となってきているようで、今年はお腹に症状がでるという報道がなされています。お気をつけください。
さて、今回ご紹介する処方は排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)です。この処方は、「金匱要略」を出典とする排膿湯と排膿散を合わせたもので、江戸時代に吉益東洞(よしますとうどう、1702-1773年)が創出して名付けたとされています。両処方は皮膚粘膜の化膿性炎症に用いられたものとして「金匱要略」に残されてはいますが、処方内容のみで使用法についてはその指示する記載を失っているとされます。
排膿湯は桔梗、甘草、大棗、生姜からなり(桔梗湯加大棗生姜とも呼ぶことができる)、排膿散は桔梗、枳実、芍薬、鶏子黄(けいしおう)からなる処方で、それぞれ化膿性疾患に用いたものだそうで、両者を合わせることによって穏やかな処方となり、幅広くもちいることができたとされます。ここで、鶏子黄は文字どおり鶏の卵黄のことであり、「陰を滋(じ)い、燥を潤す、血を養い、風を息(やす)める」といった効能をもつとされます。「心中煩悶による不眠、熱病による経連と意識不明、結核性衰弱や過労による吐血などのほか、やけど、熱瘡、湿疹を治す」生薬とされていますが、排膿散及湯では除かれています。
桔梗
甘草
大棗
生姜
枳実
芍薬
また、現代医学における使用目標は化膿性腫物の初期で、炎症のために患部が硬く、痛みをともなうものを目標としますが、時間が経過して痛みが引いたのに排膿は続くといったものにもよいとされています。癤(せつ)*や癰(よう)**などにも応用されますが、抗菌薬との併用が必要なことが多いです。さらに、副鼻腔炎の治療に用いられることもあるようで、葛根湯加川芎辛夷が無効で、膿性の後鼻漏を主症状とする場合などは本処方が有効だとして活用されています。
注)
*癤:おでき。毛穴が詰まった状態が続くことにより、表皮下にたまった脂質や角質が化膿して形成される小さな膿瘍のこと。赤く腫れた部位ができ、痛む場合があります。特に顔面や首、背中などにできることが多く、指で潰したり、擦りすぎたりすると、化膿が進んで悪化することがあるため、注意が必要。
**癰:皮膚感染症の一つ。化膿した毛嚢炎や皮下膿瘍などの炎症が進行し、熱や発熱、全身倦怠感などの症状を伴うようになった疾患のこと。特に深部の炎症が進行した場合は、治療に時間がかかることがある。
(2026年1月30日)


