特設サイト第15回 就眠運動する薬用植物

  • 昼間のエビスグサ(左)と夜のエビスグサ(右)。上の鉢のように、双葉のときから夜になると葉を閉じます。
    昼間のエビスグサ(左)と夜のエビスグサ(右)。上の鉢のように、双葉のときから夜になると葉を閉じます。

今回は、眠る薬用植物を紹介します。

マメ科の植物には、夜になると葉柄(ようへい)や小葉(しょうよう)の根元で折れ曲がり、葉を閉じて、あたかも眠っているかのようになるものがあります。有名なものでは、合歓の木(ネムノキ)があり、大手総合電機メーカーのテレビコマーシャルの「この木なんの木」で知られるアメリカネムノキという大きな樹木を対象に、この就眠運動がよく研究されています。

アメリカネムノキの就眠運動は、葉の付け根の「葉枕(ようちん)」という部位の上面側の運動細胞(extensor運動細胞)が収縮し、これと同時に下面側の運動細胞(flexor運動細胞)が膨張することで葉が畳まれることがわかっています。このとき、働いているのが「ジャスモン酸グルコシド(JAG)」という化合物です。JAGはextensor運動細胞に選択的に結合し、その収縮を誘導しますが、flexor運動細胞には結合せず、収縮も引き起こしません。JAGが結合したextensor運動細胞は、細胞外にカリウムイオンを放出し、それがflexor運動細胞に作用して、膨張を引き起こすと報告されています。
アレキサンダー大王(紀元前356年~323年、在位紀元前336年~323年)の時代から知られる不思議な現象として紹介され、そのメカニズムについては古くからいろいろな研究がなされてきました。一種の生物時計です。
身近なところでは、夜にならなくても触れば葉を閉じるオジギソウもマメ目ネムノキ科の植物ですから、同じ仲間です。

私たちが生薬として利用している植物もマメ科のものが多く、やはり就眠運動をするものがあります。種子を主に便秘の解消に用いるエビスグサがそれです。
生薬名はケツメイシと呼ばれ、その名を付けた音楽グループがありますが、漢字では「決明子」と書き、「目を明らかにする」、すなわち視力の回復を目的に用いることを表し、現在でも眼球外部の炎症などに用いられています。
ケツメイシは、中国の最古の薬物書とされる「神農本草経」にも収載されている由緒正しき生薬ですが、漢方薬にはあまり配合されず、もっぱら民間薬として、整腸、便通に用いられ、ときに高血圧症や緑内障などにも用いられます。また、この種子は、薬用だけでなく、ハブ茶としても広く使われており、健康茶などで味わったことがあるかと思います。

一般に植物は動かないものと考えられていますが、実際には植物も周囲の環境の変化に反応して、いろいろな動きをしているものです。

(2015.7.22)

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