特設サイト第17回 彼岸花

  • 農学部附属農場に咲くヒガンバナ
    農学部附属農場に咲くヒガンバナ

お彼岸も近くなり、随分と涼しい日が増えて参りました。
日中と朝晩の気温差が大きく、体調を崩しやすくなっています。

さて、写真は春日井の農学部附属農場での一コマです。
ヒガンバナの赤い花が青空に映えて、とても綺麗です。
八事キャンパスや天白キャンパスのまわりでも、鮮やかに咲く姿を見かけるようになってきました。
子供の頃には、お彼岸のお墓参りの行き帰りに、畦道(あぜみち)に生えているヒガンバナを摘み取っては首飾りにした記憶がありますし、白いヒガンバナはめずらしいと言って祖父が喜んでいたことを思い出します。

ヒガンバナは、学名を Lycoris radiata といい、「中薬大辞典」においては鱗茎(りんけい)(※1)を「石蒜(せきさん)」と呼び、生薬として扱っていますが、有名な有毒植物です。
日本では、畔や土手、墓地に多く見られますが、これもその毒性により水田やお墓を野生動物から守るためであったと言われています。毒性を示すのは、ヒガンバナアルカロイドと総称される成分であり、主なものにリコリンやガランタミンという化合物が知られています。

ヒガンバナの鱗茎はデンプンを多く含み、また有毒成分であるリコリンは水に溶けやすい性質を持つため、戦時中や非常時には長時間水にさらして無毒化し、食用に用いたという逸話もあります。生薬としては、去痰(きょたん)作用や利尿作用、さらには解毒作用や催吐作用があるとされますが、その毒性ゆえに使いにくいと言われています。

興味深いところでは、前述した毒性成分の一つであるガランタミンがコリンエステラーゼと呼ばれる酵素の阻害剤であることが見出され、アルツハイマー型認知症の治療薬として用いられていることがあります。ガランタミンは、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を阻害して学習・記憶を改善するだけでなく、アセチルコリンの受容体をより敏感に反応するように調整する作用もあり、アセチルコリンの学習・記憶における作用を効率的に増強する作用もあると考えられています。

古くから私たちの身の回りにあり、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)や死人花(しびとばな)など数多くの異名をもつ植物ですが、現代の医薬品にも通じていることは意外と知られていないのかもしれません。

(※1)地下茎の一種。球根。

(2015.9.17)

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