特設サイト第59回 漢方処方解説(25)白虎加人参湯

今回ご紹介する処方は、白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)です。
本処方は、知母(ちも)、石膏(せっこう)、粳米(こうべい)、甘草(かんぞう)からなる白虎湯(びゃっことう)に人参(にんじん)を加えた加方です。処方の名前は、中国の四神(東西南北の四方を守る守護神)のうち、西の神に当たる白虎に由来し、処方の中心となる石膏が白いことによる名ではないかと言われています。

  • 白虎加人参湯
    白虎加人参湯

そもそも白虎湯は、急性発熱性の感染症にかかり、炎症が強く、悪寒は伴わないものの、自覚的にも他覚的にも高熱あるいは灼熱感があるものに用いる処方であるとされます。そこに人参を加味することによって、高熱と発汗により脱水症状に陥り口の渇きを強く訴える場合に用いられる処方と考えられ、さまざまな場面への応用がなされます。

例えば、急性の場合、感冒やインフルエンザなどの急性発熱性疾患において高熱が続き、身体の灼熱感が強く苦しいと訴える場合や、他覚的にも皮膚に触れると熱い場合で口やのどの激しい渇きがあり、水をたくさん飲んでもまだ足りないような状態に用いられます。
身体の熱感が強いので、消化器系としては便秘傾向であり、少なくとも下痢ではありません。古典においては、感冒にかかり、桂枝湯や葛根湯などによる治療の結果ものすごく汗をかき、ひどくのどの渇きを訴える場合とか、そうした発汗解表(汗を出させて熱を冷ます)の処置をしたにもかかわらず、熱が身体の内部にまで及び、いくらでも水を飲みたがるようになった場合にも用いると書かれています。
慢性の場合では、アトピー性皮膚炎や慢性湿疹、皮膚掻痒症などにも応用されます。また、口の渇きや多飲多尿といった症状にも用いることができるのではないかということから、糖尿病の随伴症状の改善にも用いられることがありますが、残念ながら血糖降下作用はありません。いずれにしても、身体のほてりやのどの激しい渇きがキーワードですね。

中国の古典の中には、この処方を「暍病(えつびょう)」に用いるという記載もあるそうです。この「暍病」とは、熱中症あるいは日射病のことであるとされ、汗が出て悪寒がし、身体に熱があって、のどが渇くときとなるため、白虎加人参湯を用いると言われております。
熱中症自体、非常に危険なものです。安易に漢方薬だけで対処することはできませんが、こうした伝統医薬品の中にも本処方や清暑益気湯(せいしょえっきとう)などの薬剤があるということは、はるか昔から人々は同じ症状に苦しんだ経験を持っていたことを示しており、その時代に苦労して考え出したものが現代にも受け継がれていると思うと感慨深いものがあります。

熱中症については、「第16回 熱中症と漢方治療」に詳しく記載されています。そちらもご参照ください。

(2019年5月29日)

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