特設サイト第65回 漢方処方解説(30)牛車腎気丸

今回取り上げる漢方処方は、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)です。

この処方は、以前ご紹介した八味地黄丸(はちみじおうがん)に牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)を加えたものです。もともとは八味地黄丸の適応症で、下半身のしびれや腰痛、浮腫(ふしゅ※むくみ)、尿量の減少などが強い場合に用いるとされた類方です。

牛膝(ごしつ)

牛膝(ごしつ)

車前子(しゃぜんし)

車前子(しゃぜんし)

牛膝は、ヒユ科ヒナタイノコズチの根を用いる生薬で、成分の一つとして昆虫変態ホルモンともなる化合物を含むことが知られています。漢方医学においては、「血の滞りをよくして、腰脚の痛みを消し、利尿する」作用をもつとされます。一方、車前子はオオバコ科オオバコの種子を用いる生薬で、「熱を清し、水分代謝を促す」作用があるとされます。
イノコズチの実は服などによく絡みつくことから、「くっつき虫」とか「ひっつき虫」などといって遊んだ「オナモミの実」の仲間のようなものですし、オオバコの葉は幼い頃に草相撲などで遊んだ記憶もあるものです。ともに身近な植物を利用する生薬で、特別なものではありませんが、両者を加味することで浮腫や尿量の減少を軽減する狙いがあると思えば、生薬の奥深さを感じます。

この牛車腎気丸の指標目標として、腰痛はもちろん、転びやすい、すり足歩行になってしまうといった腰以下の運動機能の低下や、男性であれば前立腺肥大の症状、女性であれば尿失禁や再発性膀胱炎などの泌尿生殖器の機能低下、また手足の冷えやほてりなどがあげられます。最近では、抗がん剤の副作用として現れる「手足のしびれ」の改善に使用される頻度が高まっており、すべての患者さんにとはいかないまでも、効果を示すとするデータが基礎・臨床ともに集まっています。

私たちの研究室では、この牛車腎気丸が糖尿病の合併症の一つである末梢神経障害の治療や予防に有効ではないかとするデータを発表しており、現在もなお、その効果の主体となる生薬や活性成分を明らかにしようと研究を続けています。西洋医薬品だけでは十分とは言えない治療に、有益な漢方薬を見つけ、提案していくことが私たちの目的です。

(2019年11月29日)

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